夏休みの宿題に「環境作文」が出たという小学生、中学生は少なくないのではないでしょうか。
特に、環境作文コンテストやコンクールが実施される自治体では、先生たちも力を入れていると思います。
環境作文は、その名の通り「環境問題」をテーマに書いた作文のことです。
環境問題はとても大きな地球規模のテーマでもありますし、少し踏み込んで書こうとすると科学的な知識や理解力も必要になってくるので、苦手意識を持っている人も少なくないはずです。
とはいえ、実際に作文を書くにあたっては環境問題について詳しく調べ、難しい知識を散りばめて書かなくてはいけない、ということはありません。
大切なことは、壮大なテーマである環境問題を、いかに自分に引きつけて書くかということ。そして、調べればわかる知識を並べるよりも、読み手に響くように自分の意見を表明することです。
それでは、環境作文の書き方やテーマを、基本的なところから少しずつ、そして具体的にみていきたいと思います。
1.環境問題とは
環境問題に入る前に、まずは「環境」について確認しておきたいと思います。環境とは、空気、水、食べ物、天気や気候など、私たちの生活に関わり、私たちの周りにあるものすべてです。
この環境が人間の活動によって影響を受け、さまざまな問題が起きてしまうこと、これが「環境問題」です。
後で具体的なテーマについて詳しく説明しますが、地球温暖化、ゴミ問題、大気汚染、食糧問題、生物の危機などの問題がこれにあたります。
人間が自然と共存して暮らしていた時代、つまり、狩りをしたり植物を採取したりしていた時代には、環境に大きな問題は起こりませんでした。
それが文明化によって都市化や人口増加が進み、テクノロジーが発達して生活が便利になるにつれて問題が表面化してきました。最近では早く手を打たないと近い将来大変な事態が起こるような深刻な環境問題まで出てきているのです。
2.環境作文とは?
環境作文は、これらの環境問題について書いた作文のことですが、そのテーマは自治体によって、またはコンクールの主催者によっても少しずつ異なります。
例えば、「豊かな自然をまもるために、私ができること」(公益財団法人イオン1%クラブ 2016中学生環境作文コンクール)だったり、「自らの学習・体験を通して環境を考える」(平成29年度静岡県こども環境作文コンクール)などがあります。
いずれも、これからの未来を担っていく小学生や中学生に、環境作文を書くという作業を通して、環境問題への関心を持ってもらい、地球環境への理解を深めてもらうことを目的にしています。
3.どんなテーマや問題がある?
では、環境問題にはどんなものがあるのかを、環境省のWebサイトなどを参考に、具体的にみていきたいと思います。
読みながら「このテーマなら書けそう!」という問題をいくつかピックアップしてみたり、気になるテーマについて、図書館やインターネットでさらに調べてみることもおすすめです。
◎環境問題の具体例
- 地球温暖化
- ゴミ問題
- 生物の多様性
- 大気汚染
- 水問題
- エネルギー問題
<地球温暖化>
地球全体の平均気温が上がっていくことを「地球温暖化」といいます。
地球温暖化によって猛暑日(最高気温が35℃以上に達した日のこと)や熱帯夜(最低気温が25℃以上の暑い夜のこと)が増えると、熱中症患者や、熱帯性の感染症が増えるだけでなく、今後次のようなさまざまな問題が予測されます。
平均気温が1℃高くなると……
・大雨などの異常気象によるリスク(危険性)が高くなります。
・深刻な影響を受ける生き物が今よりも増えるとされています。
平均気温が2℃高くなると……
・環境の変化に適応する能力が限られている生き物は、非常に高いリスクにさらされると言われています。例えば、海水の温度が上がるとサンゴは白くなり、やがて死んでしまうかもしれません。
平均気温が3℃以上高くなると……
・グリーンランドなどの氷床が大規模に溶けて戻らなくなるため、海面の高さがさらに上がるかもしれません。水没する南の島が出てきます。
ではなぜ、地球温暖化が進んでいるのでしょうか。
地球の表面は太陽の熱で温められています。余分な熱は宇宙に出ていきますが、地球は温室のビニール膜と似たはらたきをする「温室効果ガス」に包まれているため、熱の一部が温室効果ガスに吸収されて、過ごしやすい平均気温(約14℃)が保たれてきました。
ところが、最近は温室効果ガスの層が厚くなりすぎて、宇宙に出るはずだった熱が地球にこもってしまい、地球の平均気温が上がっているのです。
温室効果ガスが厚くなってしまった最大の理由は、工場や自動車が増えて、二酸化炭素の排出量が増えたためです。二酸化炭素は石油などの化石燃料を燃やすと発生します。
さらに、昔は排出された二酸化炭素を吸収してくれる森林がたくさんありましたが、現在では森林が減ったため、二酸化炭素を吸収しにくくなっているのです。
<ゴミ問題>
天然資源からさまざまな製品を作ることで私たちの生活は便利になりましたが、地球上で出るゴミの量は、世界の人口が増えていくとともに、これからも増え続けていくと予想されています。
世界のごみの量は、2050年には2010年(約104.7億トン)の2倍以上、約223.1億トンにもなるとの予測もあります。
日本では、ごみのうち約半分は再び資源として再利用されたり、自然に返されたりしていますが、残りは燃やすなどの処理がされた後に、埋め立てるなどの方法で最終処分されています。
しかし、このままでは子どもたちが大人になる頃には、埋め立てるための処分場がいっぱいになってしまい、ごみを埋めるところがなくなってしまうと予測されているのです。
<生物多様性>
地球上には3,000万種類もの生き物がいると言われています。人間も含め、たくさんの種類の生き物すべてが複雑に関わりあって存在していることを「生物多様性」といいます。
しかし今、生物多様性が失われつつあります。
その原因は……
・道路や工場、住宅などをつくるための開発によって、生き物のすみかが壊されているため
・農薬などの化学物質が川や海に流れ出して水質汚染が進み、川や海の生き物に悪い影響を与えているため
・生命力の強い外来種(外国からやってきた魚や動植物など)が、その地域にもともといた生き物(在来種)を食べたり、すみかを奪ったりしているため
・地球温暖化などによって、今までの生活ができなくなり、絶滅の危機にさらされているため
・ニホンジカなどが増えすぎて、木や草を食べ尽くしてしまい、ほかの生き物のすみかをうばっているため
・雑木林などの管理が不足しているため、そこをすみかとしている生き物が減っているため
・ニホンウナギやクロマグロなどは人間が獲りすぎたために日本国内でとれる量が減り、生息数が少なくなっている
<大気汚染>
大気汚染とは、自動車や工場などから出る化学物質によって、空気が汚れてしまうことです。
大気汚染の原因はさまざまな化学物質(汚染物質)で、空気中で人間や動植物などに害のある物質に変化するなどして、さまざまな問題を引き起こしています。
・酸性雨……自動車の排気ガスや工場の煙などにふくまれている汚染物質(硫酸酸化物、窒素酸化物など)は、大気中の水や酸素と反応して強い酸性の物質(硫酸、硝酸など)に変化します。その物質が雨水に溶け込むと、酸性雨という酸性の度合いが強い雨となって降ります。
木々を枯らしたり、コンクリートの建築物、石像や銅像を溶かしたりすることがあるだけでなく、酸性雨がたまって魚が住めなくなった湖や沼もあります。
・光化学スモッグ……自動車の排気ガスや工場の煙などにふくまれている汚染物質(硫酸酸化物、窒素酸化物など)は、太陽の強い光を浴びると変化し、有害な物質・光化学オキシダントに変化します。この物質が大気中にたまると、白いもやがかかったようになり、光化学スモッグが起きます。
目がチカチカしたり、のどが痛くなったりするなど、わたしたちの健康に被害が出るほか、植物にも害を与えます。
・PM2.5……大気中にある2.5マイクロメートル以下(人間の髪の毛の太さは、約70マイクロメートル)のとても小さな粒子(細かいつぶ状)の汚染物質のことです。人間の暮らしによって大気中に出された汚染物質が原因となって発生するほか、火山の噴火などの自然現象が原因となっても発生します。
とても小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、人間の健康に悪い影響を与えます。
・黄砂……東アジア内陸部の砂漠の砂が強風で高く巻き上げられて大気中に広がり、日本を含めた周辺の国や地域に降り注ぐ問題です。最近までは自然現象として考えられていましたが、森林の現象や砂漠化など、人間の暮らしによって起きた問題にも関わりがあるとされています。
日本には春先に飛んでくることが多く、洗濯物や車などを汚しています。黄砂が運ばれてくる途中で、人間や動植物に有害な物質を取り込んでいる可能性があるとされています。
<水問題>
私たちは水道の蛇口をひねれば、飲めるほどきれいな水が出てくるのが当たり前の社会に住んでいます。そして、そのきれいな水を、洗濯や食器洗い、お風呂、トイレを流す水など、「洗う」ための目的でも使っています。これはとても贅沢なことなんです。
WHO(世界保健機関)とユニセフのデータによると、世界で安全な水源が利用できない人たちは約6億6,300万人もいて、トイレや下水道などの衛生設備を利用できない人も24億人もいます。
水道も、整備された井戸もない国の人々は、遠くにある水源まで水をくみにいっています。水源といっても消毒されていない沼や池、浅い井戸、壊れた配水管、川などが多いので、泥やゴミ、病原菌や寄生虫などに汚染された水を利用することになります。
安全ではない水や衛生設備が原因となる病気によって、年間30万人、1日に約800人以上の5歳未満の子供が死亡していると考えられているのです。
では、なぜ水が足りなくなってしまうのでしょうか。主な理由は以下の4つです。
・人工増加……開発途上国では、人工の増加とともに生活や農業、工業に使われる水が増えているため
・気候変動……気候が変わって、干ばつになりやすくなった地域があるため
・安全な水の減少……水温が高くなってプランクトンが発生したり、有害物質で汚染されて水質が悪くなったりしている場所が増えているため
・水争い……水を奪い合う戦いが起きて、水の供給が止められている地域があるため
<エネルギー問題>
世界の人口が増えるとともに、エネルギーの消費量もどんどん増加しています。
世界で主に使われているエネルギーは、石油、天然ガス、石炭ですが、これらは化石燃料なので燃やすと地球温暖化を悪化させる二酸化炭素が増えてしまいます。それだけではなく、石油も天然ガスも石炭も、いずれは底をついてなくなってしまう心配もあります。
そのため、今は「持続可能なエネルギー」を増やすことがとても重要になっています。持続可能とは、長く持ち続けることが可能、という意味で、太陽光や風、水、地熱といった自然界から得られるものを利用する発電方法のことです。発電するときに二酸化炭素を排出しないのも特徴です。
持続可能エネルギーには
・太陽光発電(ソーラーパネルで太陽光を電気に変換)
・風力発電(風で羽を回して発電機を回す)
・地熱発電(地熱を利用してつくった水蒸気で発電機を回す)
・小水力発電(水が落ちる力を利用して発電機を回す)
・木質バイオマス発電(間伐材や余った木材を燃やした熱で水蒸気を作り、発電機を回す)
などがあります。
もう一つ、2011年3月11日に起きた東日本大震災では、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、放射性物質が放出されました。この事故によって、原子力発電をエネルギー源としていっていいのか、議論となっています。
4.私たちにできるエコ活動
次は、これらの環境問題に対して、自分たちに何ができるかを考えてみましょう。
ここが、作文の大きなポイントになります。
ここでは、それぞれのポイントについていくつかの例を挙げますが、自分の生活を振り返ってみて、できそうなことを考えてみましょう。
—地球温暖化……電気の使用量を減らして二酸化炭素を減らすなど、私たち一人ひとりにできることがたくさんあります
・テレビや照明などは見る時間、使う時間を減らし、こまめに消す
・冷房や暖房の設定温度を見直して衣服の調節をする
・夏は打ち水をしたり植物で緑のカーテンを作ったり、冬はお風呂が冷めないうちに家族が続けてお風呂に入ったりする
・近い距離は自動車などを使わず、歩いたり自転車に乗ったりする
—ゴミ問題……ポイントは、3Rにあります。3Rとは、Reduce(ゴミの量を減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(再び利用する)のことです。
・Reduce=使う資源やゴミの量を減らす
*詰め替えのできる製品を選んで買う
*必要のない包装は断る
*レジ袋をもらわず、エコバッグを持参する
・Reuse=ものを繰り返し使うこと
*壊れたものを簡単に捨てずに修理して使う
*小さくなった服やいらなくなったものは捨てずに必要な人にゆずる
*割りばしを使わないようにマイはしを持ち歩く
・Recycle=使い終わったものを資源として再び利用すること
*古新聞や古紙を資源回収に出す
*カン、びん、ペットボトル、トレーなどはリサイクルボックスでゴミを分別する
*リサイクルされた製品を選んで使う
—生物の多様性……自然にふれて生物の多様性を知ること、自然を守ることが大切です
・自然の中へ出かけ、自然や生き物にふれる
・自然や生き物の観察会、植林などの保護活動に参加する
・ゴミを山や自然の中、海や川に捨てない
・揚げ油などを下水道に流さない
・特定の種類の魚や自然の植物をとりすぎない
—大気汚染……節電をしたり自動車に乗る機会を減らすことで大気汚染物質の排出を減らすことにつながります
・テレビや照明などは見る時間、使う時間を減らし、こまめに消す
・冷房や暖房の設定温度を見直して衣服の調節をする
・夏は打ち水をしたり植物で緑のカーテンを作ったり、冬はお風呂が冷めないうちに家族が続けてお風呂に入ったりする
・近い距離は自動車などを使わず、歩いたり自転車に乗ったりする
—水問題……水の使用量を減らすこと、海や川の水を汚さないことが大切です
・水道を出しっ放しにしない
・食器を洗う時はできるだけ貯めた水で洗う
・洗濯にお風呂の残り湯を使う
・揚げ油などを下水道に流さない
・海や川に飲み物や食べ物を流したり捨てたりしない
—エネルギー問題…持続可能なエネルギーに関心を持ち、電気の使用量を減らす
・太陽光発電や風力発電など、持続可能なエネルギーについて知る
・ハイブリッドカーや電気カー、水素自動車などに関心を持つ
・地球温暖化、大気汚染の項目と同じように家庭で節電する
5.作文の書き方
作文のテーマが決まったら、次はそのテーマにもとづいた「具体的な体験、経験」を見つけます。
具体的な体験や経験がない作文は、とても薄っぺらな印象を与えてしまいます。
逆に体験が入ると作文が生き生きとしてきて、読者の共感も得やすくなり、説得力も増します。
例えば
・川に遊びに行ったら、川にたくさんのビニール袋やペットボトルが浮いていたという体験
・魚釣りに行って帰宅して魚を料理したら、胃袋の中からビニール袋の一端が出てきたという体験
・夏休みに植林活動に参加した体験
・海辺のゴミ拾いをした体験
・水を出しっ放しにしていたら、怒られた経験
・「暑すぎる・・・」と言ったら祖母に「昔はこんなに暑くなかったのに」と言われた経験
・旅行に行った時に、たくさんの風力発電を見た話
・田舎に遊びに行ったら、ゴミの分別の仕方が違っていた話
・午後になると、自治体から「光化学スモッグ警報が発令されました」とアナウンスが流れることに「なぜ?」と疑問を持った話
などが挙げられるでしょう。
体験談を書く時は、読んでいる人がその場面を想像できるように、できるだけ臨場感を持たせるようにします。
そのためのポイントは書き出しです。
書き出しをちょっと、工夫してみましょう。
<カギかっこで始める>
作文を誰かの言葉、カギかっこで書き始めると、読む人をグッと引きつけます。書こうとしている体験談に、誰かの言葉が関係しているのであれば、その言葉をカギかっこで引用して書き始めるといいでしょう。
—「トイレの電気、消しなさい」。
僕はいつも、お母さんに怒られる。
<場面の描写で始める>
—友達と一緒に河原に駆け出し、さあ泳ごう!と思ったら、ギョッとして足が止まった。岩場の周りに、たくさんのゴミが流れ着きたまっていた。
—緑の葉っぱが生き生きとしていた。川のせせらぎが心地よく、セミの声がうるさいくらいにぎやかだった。
今年の夏、山あいの村に引っ越した親戚の家に遊びに行った。
<短い文で始める>
—車の屋根が、一面黄色に染まっていた。
—暑い夏だった。
書き出しが決まれば、その後はスムーズに体験したできごとを書いていけるはずです。
そのうえで
<その体験を通してどんなことを感じ、何に気付いたのか>
<体験に関係する環境問題を解決するために、自分や社会になにができるのか>
<どんな社会、どんな未来、どんな環境を作っていきたいか>
この3つの要素を入れると、環境作文がグッと良くなります。
① <その体験を通してどんなことを感じ、何に気付いたのか>
体験を書いたら、その経験を通して「自分」がどう思ったのか、何を感じたのか、そこをしっかりと書いていきます。
なぜなら、同じように体験したとしても、どう受け止めるかは人それぞれ違うからです。
大切なのは「自分が」どう思ったか。
人にどう思われるか、などと気にせずに、思ったことを堂々と、そして素直に書きましょう。
② <体験に関係する環境問題を解決するために、自分や社会になにができるのか>
4.私たちにできるエコ活動 の項目で書いたように、環境問題を解決するためにできることは、大きなものから小さなことまで、いろいろあります。
体験に関係する環境問題を解決するためには、どんなことができるのか、調べたり、自分で考えたりしたことを書きましょう。
③ <どんな社会、どんな未来、どんな環境を作っていきたいか>
最後の結論としては、その問題をもう少し大きな視点で見て、自分の意見や社会への提言を書いてみましょう。
「私たちが生きているのは、地球環境があってこそ。将来、自分の子供や孫が安心して生きていけるように、自分ができることをやり、友達や家族、周囲の人にも呼びかけていきたいです」
「一人一人にできることはとても小さいかもしれません。でも、日本中の人、世界中の人が同じ気持ちを持って取り組めば、変わるはずです」
など。
最後のまとめとなる部分なので、自分の言葉で、思いを込めて書き上げましょう。
※参考ページ
環境省・こども環境省
http://www.env.go.jp/kids/index.html
静岡県こども環境作文コンクール
http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-020/kankyo_kyouiku/documents/sakubun26.html